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きらめけ!アイドル!!
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活動準備!
10周年記念小説

桜「アイドルになりたかった。歌を歌うのが好きだったし、みんなに元気を届けたかった。そうしたらみんなも楽しいし、私も楽しい。上手く言えないけど、それって、とっても凄い事だと思うから」

楓「トップアイドルになる……それが私の夢。アイドルは私の憧れで、絶対に譲れないもの。その為なら、私はどんな事だって頑張れる。確かに踏み出した夢への一歩、立ち止まってなんかいられない」

若葉「歌で人を幸せに出来るって素敵な事だと思った。アタシは歌が上手いとは思わないけど、そんなアタシでも誰かを幸せに出来るんだって。だからアタシは、今日も桜と楓と一緒に歌い続けるよ」

私たちはアイドルだ。
正確に言えば「アイドルの雛(ひな)」

楓、若葉、私の三人でユニット「Twinkle Sisters」を結成して少し経ったある日のこと。今日は宣材写真の撮影。

1、2秒の間隔をあけてシャッター音が数回鳴る。

「ありがとうございましたー」
お礼を言い、楓ちゃんと若葉ちゃんの居る、撮影裏へ戻る。

「緊張したー……」

歌を歌うのは大好き。でも、それだけではアイドルとしてやっていけないのは辛いところ。カメラマンさんの前でポーズを取るなんて簡単な事だと思ってたけど、思うのと実際にやるのは大違い。緊張して、微妙に笑顔が引き攣ってるし、最悪だ。せっかくキレイな衣装も着ているのに台無し。

「桜ちゃん、お疲れ様」

「お疲れー、桜」

撮影が終わると自分の番を待っていた楓ちゃんと若葉ちゃんが近づいてきて笑顔を向ける。

「ありがと、楓ちゃん、若葉ちゃん……」

「おやー? どうしたの、いつもの元気が足りないけど、桜お疲れ気味?」

「まぁ、そんなところかな……」

撮影が上手く行かなくて気分が乗らないだけだけど、さっそく若葉ちゃんに見抜かれた。

「ダメだよー、そんなんじゃ!リラックス、リラックス、ね♪」

「……うん! そうだよね、私は元気なのが取り柄だし!」

「その意気だよ♪」

若葉ちゃんが私を元気付けてくれて、私もそれに応える。でも、内心やっぱり気落ちしてしまう。

「それでは、次は私の番だから、行って来るわ」

楓ちゃんが颯爽と歩いていく。

「お願いします」

1、2秒の間隔をあけてシャッター音が数回鳴る。

「うわー、楓ちゃんは全然緊張してないなぁ……」

堂々としていて、ポーズもばっちりで、かっこいい。
再度1、2秒の間隔をあけてシャッター音が数回鳴る。

楓ちゃんはお姫様のようなドレスを着ている。元々お嬢様のような雰囲気の楓ちゃんにはピッタリな衣装だ。それに比べて私は……。

自分の引き攣った笑顔と、目の前の楓ちゃんの浮かべる上品な笑みを比べて、ますます落ち込んでしまう。どうしたら、私もあんな風になれるんだろう。私も、あんな風にキラキラしたいな……。

「ありがとうございました」

そう思っている間に楓ちゃんの番が終わり、戻ってくる。

「お疲れー」

「お疲れさま」

「中々、写真を撮られるというのは緊張するわ」

「これからは写真なんて幾らでも撮られるんだから、これくらいで緊張してたらダメだよ!」

若葉ちゃんの言う事はもっともな事。
私も引き攣らずにどうやったら落ち着いて撮れるのだろう。

「そうよね」

そう言って、楓ちゃんはふわりと笑う。どうしたら、私もそうなれるんだろう。
どうしたら2人のようにできるのかな。

「よーし、次はアタシの番だね! 綺麗に撮ってもらうんだ~♪」

若葉ちゃんは意気揚々とカメラマンさんたちの下に向かう。

「お願いしまーす!」

1、2秒の間隔をあけてシャッター音が数回鳴る。

元気いっぱいの若葉ちゃんは、ボーイッシュな格好をしている。いつも元気な若葉ちゃんは、そんな格好をしているとまるで男の子みたいでカッコいい。やっぱり私とは違う。

「はぁ……」

「桜ちゃん、どうしたの?」

小さくため息をついたつもりだったのに、隣にいた楓ちゃんには気づかれてしまったみたいだ。

「ううん、なんでもないよ!…ちょっと……疲れただけ」

「桜ちゃん、悩みがあるのなら正直に言って」

楓ちゃんの表情が少し曇り、私の顔をジッと見てからそう言った。大して長い付き合いでもないのに、楓ちゃんには私が悩んでいる事がすぐに分かるようだ。私自身がそういう表情をしているのかもしれないのだけれど。

「悩みというか……なんというか」

段々声が小さくなっていくのに比例して、どんどん自信もなくなっていく。

「それは私たちにも言えない事なの?」

「ううん……そんな事はないけど……」

「なら話して 私たち、『Twinkle Sisters』のメンバーでしょ? 一緒にキラキラ輝くんじゃないの?」

「あ……」

私はふと、ユニット名を考えた時のことを思い出す。
ユニット名は私の発案だった。

「私たちのユニット名はね、『Twinkle Sisters』がいいと思うの!」

若葉ちゃんが不思議そうな顔をする。

「『Twinkle Sisters』? それ、どういう意味だっけ?」

間髪入れず楓ちゃんが解説をいれた。

「Twinkleっていうのは、日本語で星がキラキラ光るみたいな意味ね」

「そうそう!で、Sistersっていうのは姉妹って意味だから、いつも一緒にキラキラと輝こうって意味なの!」

「それ、イイ! 凄くイイと思う!」

若葉ちゃんの賛成で、私の心は一層と晴れやかになる。

「でしょ~~♪」

「じゃあ、これから私たちはずっと一緒ね。楽しい時も、辛い時も、皆で乗り越えるんだね」

「よ~し、これから頑張っていこ~~♪」

そして声が揃う。

「おー!!」

…そうだ。私たちはずっと一緒で、これから三人で頑張り続けるんだ。楽しい時も辛い時も、楓ちゃんと、若葉ちゃんと一緒に……。

若葉ちゃんが近づいてきた。

「ふわ~、良い感じに撮れたよ~」

そうして私の雰囲気を察して、不思議そうに足を止めた。

「ん? どうしたの?」

「ん、ちょっと……」

私を気遣うようにしながら言う楓ちゃんに私は言う。
「大丈夫だよ、楓ちゃん」と、はっきりと、強く。

「桜ちゃん?」

先程とは少し違う表情に、楓ちゃんは戸惑ったようだ。
私を気遣ってか若葉ちゃんには何も言わないでおこうとしたみたいだけど、もうその必要は無い。私は、二人に頼ってもいいんだ。

「実は、ちょっと悩んでて」

若葉ちゃんが首を傾げた。

「悩み事?」

「うん。実はね、宣材の撮影が上手く行かなくて」

今度は楓ちゃんが首を傾げる。

「上手く行かないっていうのは、写真の出来に納得がいかないって意味?」

「そうなの。どうしても笑顔が引き攣ったりしちゃって、楓ちゃんや、若葉ちゃんみたいに上手く出来ないんだ」

「う~ん、そういえば、桜は写真撮ってもらってる時緊張しているみたいだったような……」

「硬くなってたね」

やっぱり、楓ちゃんにもにもバレていたみたいだ。

「私ね、だから自分は二人みたいに輝けてないと思ったんだ。それで悩んでて」

私が悩みを話すと、二人は少し黙って、声を揃えてこう言った。

「なんだ、そんな簡単な事」

「え? え? 簡単な事?」

どうしても引き攣ってしまうのに、どうしたらかんたんに自然な笑顔をカメラの前に向けられるのかな。

「そう。とっても簡単な事よ」

「うんうん」

楓ちゃんの発言に若葉ちゃんは頷くけれど、私にはやっぱりわからない。

「え~と、私にはよく分からないんだけど?」

「つまりね、桜ちゃんは難しく考えているだけなの」

楓ちゃんが微笑みながら言う。

「いつも通りでいいんだよ、いつも通りで」

若葉ちゃんも。

「いつも、通り……」

確かめるようにそう言った。いつも通りって…なんだろう。

「そう、桜ちゃんはいつも通り、明るくしていればいいの!そしたら、それだけで桜ちゃんも輝けるから」

「いつもみたいに何も無いところでコケちゃったりしてもいいんだよ?」

若葉ちゃんに、からかうようにそう言われ、少しムッとなった。

「そんなにいつもこけてない!」

もう、若葉ちゃんってば…。
…そうか、難しく考えてただけなんだ。
楓ちゃんと若葉ちゃんはいつも通りの自分でいただけ。私は自分を少しでも良く見せようって考えてたから、空回りしちゃったんだ。アイドルにとって、自分を良く見せるのは大事だけど、でもそれ以上に、自分を見せていかないといけないんだ。そして、そのままの自分も好きになってもらうこと。

「それが……」

そう呟くと、

「アイドルなんだ。」

三人の声が揃う。そして三人で微笑みあった。

「ありがとう、二人とも 私、もう大丈夫だよ」

「よかった」

「なら早く撮り直してもらわないとね」

若葉ちゃんの言う通りだ。今度はきちんと撮ってもらえる、絶対に。

「うん!」

そう返事をしてカメラマンさんの下に駆けた。
ここから始まるんだ。私たち「Twinkle Sisters」は。辛い事があるかもしれない、悲しい事もあるかもしれない。でも、それでも私たち三人はずっと一緒で、それ以上の楽しい事だって、三人一緒なら、絶対に見つけれる筈だから。

「すいませーん! もう一度撮り直しお願いしま……キャアア!!」

「大丈夫、桜ちゃん!?」

「あーあ、コケてもいいと言ったけど、本当にコケちゃった」

勢い余ってコケちゃったのを二人が駆け寄ってきて起きるのを手伝ってくれる。

「アタタ……」

「大丈夫? どこにも怪我は無い?」

楓ちゃんが心配そうに見つめるけれど、本当に怪我は一つもない。

「うん、なんとか大丈夫みたい」

「不思議よね…いつもあんなにコケてるのに、いつも怪我が無いなんて」

たしかに若葉ちゃんの言う通りだ。

「普段の行いがいいから、とか?」

「本当に大丈夫みたいね」

楓ちゃんが、私の体中をくまなく触り、本当に大丈夫か確かめてくれる。若葉ちゃんも、呆れているようだけど私を心配してくれているのが分かった。

「じゃあ、改めて行ってくるね!」

「うん、頑張って」

「今度はコケないようにねー」

「もう一度お願いしまーす!」

2人の声援を背後に、私はもう一度カメラマンさんの下に駆ける。

カメラのレンズの前に立って、私は笑う。自分をよく見せようとして笑うのではなく、いつも通りに、ありのままの私として笑顔をみせる。それだけで、今度は自分の顔が引き攣っていないのが分かった。視界の端に、二人もこっちを見て笑顔を浮かべているのが見える。私は大丈夫だ。きっと、今の私も二人みたいに輝けてる。

「~~♪」

今の音楽は私のテーマソング。この曲を鼻歌で口ずさむだけで力が湧く。
私はアイドルになりたい。歌を歌うのも好きだ。キラキラ輝いて、みんなを笑顔にするんだ。
楓ちゃんと若葉ちゃんとなら、それが出来る気がした。

……

これが私たち、「Twinkle Sisters」の始まり。


スタッフ
  小説:月雲瑠依
イラスト:ルルカ


公開日
2023年12月17日



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