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きらめけ!アイドル!!
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Twinkle Sisters
10周年記念小説

「ええ!? 台本が無いってどういう事ですか!? え? 私は台本が無い方が面白い? いやぁ、それ程でも~~……ってそんな場合じゃないですよ!二人もスタッフさんと一緒に笑わないでよ! これは一大事なんだよ!? あ、マネージャー! お願いです、助けてください! ……って、満面の笑みで親指立てられても嬉しくないですから!! ん? 何、楓ちゃん? ちょっと今それどころじゃ……ええ!? 本番始まってるの!? それを早く言ってよ! えー……コホン」

2人に「せーの」と小声で合図を送った。

「Twinkle Sistersの『一番星ラジオ』~~! いえーーい!! ……って二人も言ってよ!? 何? これがイジメ!? スタッフさんも笑わないで下さい! ……驚いた顔しないで下さいよ! 声が聞こえなくても見れば分かりますから!だから二人とも笑ってないで助けてよ~~! え? そろそろラジオに集中して? 出来ませんよ! ……分かりました! 分かりましたから! えーと、この『一番星ラジオ』は私、姫宮桜と」
「望月楓と」
「夢咲若葉の三人で送る、皆さんを笑顔にするラジオです」
「わーパチパチパチパチ」
「楓ちゃん、なんでそんな棒読みなの!?」
「何というか、私のキャラじゃない気がして」
「そんな理由!?」
「桜がツッコミに回るなんて珍しい……」
「ま、まぁ、それは置いといて……えと、ここからどうするんだっけ?」
「お知らせのコーナー」

楓ちゃんが小声で教えてくれた。

「お、お知らせ? のコーナーです」

何も分からず2人に小声で助けを求める。

「……な、何をお知らせするの?」
「ライブの事だってば! このラジオだってその為に始まったのにっ」

若葉ちゃんが小声で返してくれた。

「あ、ああ~~、ライブだったね! えと、私たちTwinkle Sistersのライブが行われます! 初のソロライブなので緊張してますけど、精一杯頑張りますのでお願いします!」
「お願いします!」

続いて2人が声を重ねた。

「詳しくはTwinkle Sistersの公式HPで確認して下さいね♪ ……それでぇ~~、次は何をすればいいのかな?」
「台本も無い事だし、まだラジオが始まったばかりな事を考えるとお手紙も厳しいかな。となると、フリートーク、とか?」

楓ちゃんの案は最もだけど…。

「ええ! フリートーク!? 何話したらいいか分からないよ~。ト、ト○ポの美味しさについてとか?」

「ト○ポって美味しいよねえ。中に詰まったチョコの味わいが何とも言えない……って、違う! なんでト○ポ!?」

若葉ちゃんのノリツッコミは的確。
でもそれくらいしか思い浮かばないんだもの。

「もっとこう、リスナーの人たちが知りたそうな事とか話したらいいんじゃない?」

再び楓ちゃんが提案をくれた。なんだかラジオって感じ!

「リスナーの人たちが知りたそうな事……う~ん、あっ」
「何か思いついたの?」
「うん! ズバリ給料について!」
「……え?」

二人の声が重なった。

「よくテレビとかで芸能人の給料についてとかやってるよね? つまり皆私たちの給料が知りたいんだよ!」
「え……え、いや、それは違っ…」
「少し前までは貧困に喘いでいた私たちだけど、最近はお仕事も増えてきたんだ~~。まだ年収は分からないけど、最近の月給は――」
「わーわー! それはダメだからーー!」

「えー、ただいま桜の発言が危険だったので一時的にマイクを切らせて頂きました。お騒がせします。リスナーの皆~~、チャンネルを変えずに待っててね~~♪」

う、うぐ…若葉ちゃんごめんね。

「――と、言いたいところですが、残念ながら尺の都合上本編に入らなければなりません」

う、楓ちゃんもごめん。またやっちゃった…。

「大人の都合とも言うね」
「いよいよ始まる私たちのソロライブ。やっと掴んだ夢へのチャンス……どうか最後まで私たちを応援して下さい」

そして二人の声が重なる。

「では、最終話の始まりです!」



車の走行音が聞こえる。
今私たちは車で会場まで移動しているのだ。

「はぁ、ついにこの日だねぇ~~。昨日の夜は興奮し過ぎて眠れないかと思ったよ~~」
「私も緊張しているわよ。それに、まだ信じられない」
「だよねぇ。まさかいきなりソロライブって」

アイドル歌合戦で優勝した私たちは、ソロライブの権利を獲得した。しかも、小さいけれどドームライブだ。優勝した瞬間どころか次の日になっても現実感が無くて、これは夢なんじゃないかと思ったけど、夢なんかではなくて、その日から日々のお仕事に加えてライブの準備まで加わったから大変だった。
何が大変だったかと言えば、やっぱり体力だ。ダンスも歌も気合いが入っている。でも、楓ちゃんも若葉ちゃんも、勿論私だって一度だって弱音は吐かなかった。これは私たちにとって夢への近道に違いなかったし、皆で掴んだチャンスだから。最高のライブにしたいって、思っていた。

「……お客さん、いっぱい来てくれたらいいね」

私の呟きに、二人が頷いてくれた。緊張と、同じくらいの希望に溢れて、私たちの初のソロライブが始まる。

「わぁ~~、結構お客さん来てるねぇ」
「それだけ注目されているって事かしら」
「でも今日来てくれた人が全員ファンだとは思わない方がいいと思うけど」
「この客をどれだけファンとして惹き付けるかが重要ね……」

ドームにはたくさんのお客さんが来ていた。マネージャーから聞いた話だと、ドームは満員になりそうらしい。アイドル歌合戦の様子はテレビでも放映されていて、その結果の優勝だったから、世間でもそれなりに注目されていた。その所為か、ライブの準備はあるというのに仕事は以前より増えるしで、大変さは歌合戦の時よりも酷かった。でも、そうやって今日を迎えたからこそ意味があるんだ……って楓ちゃんが言ってた。

「楓ちゃん、若葉ちゃん、そろそろメイクしてこようか!」
「そうね。もうすぐ始まるし」
「いつもより気合い入れてメイクしないとね」
「無駄に気負うよりは、いつも通りの方がいいと思うけどね」

あれよあれよという間に準備は整い、私たちは舞台袖で緊張して固まっていた。

「うわ……実際にこれだけの観客を見ると凄い迫力」
「さすがに緊張するわね……」

珍しく、二人の方が緊張しているみたいだった。いつもの私なら、今の二人以上に緊張していたかもしれない。でも、今の私は不思議と落ち着いていた。

「ねぇ、アレやろうよ」

私はいつものように、二人の前に手を出す。これは合図だ。

「……そうね」
「オッケー」

二人が私の手に、手を重ねる。

「じゃあ、いくよ? ――Twinkle Sisters! ふぁいっ、おーー!!」
「おーー!!」

2人が声を重ねた後に私たちはステージ上へ歩き出す。沢山の歓声が聞こえる。楽曲が聞こえてきた。あの聞き慣れた楽曲。沢山…毎日毎日沢山聞いたあの歌。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

三人とも息が切れている。締め括らなきゃ、私が。

「っ……Twinkle Sistersでーーす!!はぁ、はぁ……今日は私たちのライブに来てくれて……ありがと~~!!」

あぁ、歓声が聞こえてくる。

「今日は私たちの初めてのソロライブです!この記念すべき日を、皆さんと一緒に過ごせて、とても嬉しいです!」

楓ちゃんが一言。

「精一杯歌って、踊るので、最後までよろしくお願いしま~~す!!」

若葉ちゃんも一言。歓声が湧き起こる。
会場に集まった人たちが私たちを見ている。皆が歓迎してくれている。だったら、私たちももっと頑張らないと!

「じゃあ、さっそく次の曲に行きたいと思います! 聞いて下さい!」

続いて流れたのは私のソロ曲だ。お客さんとの一体感を感じる。とても楽しい。歌合戦の時はプレッシャーで余裕が無かったけど、今ならよく分かる。ここに立っているだけで会場の全部が見えて、皆が笑顔なんだ。私たちは、こんなたくさんの人を笑顔にする事が出来るんだ! ずっとずっと、思ってた。世界中の人たちを私たちの歌で元気にしたいって。今はまだこの会場に来ている人たちだけだけど、これから先、楓ちゃんと、若葉ちゃんと一緒ならきっと、もっとたくさんの人たちを笑顔に出来る筈だ。私は今、アイドルなんだ! 三人で頑張ってきたから今がある。私たちはこれからも頑張っていける! Twinkle Sistersは輝き続ける!

パフォーマンスが終わると歓声が湧く。

「桜ちゃん、お疲れ様。私も、頑張るから」

そうして次に流れたのは私の、望月楓のソロ曲。
アイドルは私の憧れで、夢だった。今この瞬間に辿り着くまで、長かった気もするし、短かった気もする。偶に不安になる事もあったけど、そんな時も三人でならと頑張ってこれた。その結果が今日の舞台。私は今、たくさんの人たちに囲まれてキラキラと輝いている。まるで、小さな頃にテレビで見たアイドルのように。でも、私の……私たちの夢はここで終わらない。ううん、終わらせない。私たちはもっと頑張れる筈。トップアイドルだって夢じゃない筈。そう信じてきたから今があって、これからも信じ続ければ叶うんだ。一人では立てなかった舞台に立って、私が思うのは。まだ自分は道の途中だという事。でも、そこに徒労感は無かった。だって、こんなに楽しいから!

「バトンタッチ!」

楓のパフォーマンスが終わると歓声で会場がいっぱいになる。
ハイタッチで入れ替わると今度はアタシのソロ曲が流れた。二人が頑張ってた。ならアタシは二人以上に頑張る! アタシは歌が上手いとは思わないから、ダンスで勝負するんだ。二人と初めて会ったのが、もう随分昔の事みたい……なんて言ったら、お婆さんみたいとか言われちゃうかな。でも、それだけたくさんの時間を過ごしたんだ。誰かを笑顔にする為に歌うだなんて、よく言っていたものだと自分の事ながら思う。その夢は、こうして形になった訳だけど。悔しい事はたくさんあった。オーディションに落ちたらヘコむし、練習は大変だし、桜はドジをするし……アハハ、本当に大変で、本当に楽しかった日々だ。でも、楓なら、これはまだ夢の途中だと言うだろうし、桜なら、まだまだだと笑顔になるだろう。だから、アタシだって負けてられない!

「はぁ、はぁ……」

歌って歌って、歌い終わっても歌って、とうとうライブは最後の一曲だ。身体はクタクタだし、息は上がっている。けど、私は笑っている。

「皆ーー、まだまだ元気ーーっ?」

そう声を掛けると歓声で返事を返してくれた。

「アハハ! 心配ないみたいだね!」
「むしろ桜こそキツイんじゃない?」
「実はそうかも~~。でも、まだ大丈夫!」
「泣いても笑っても次が最後。頑張ってくれないと」
「うん。そうだね」

最後。次で最後。私たちの初めてのソロライブはそれで終わり。達成感みたいなのが溢れている。本当に、楽しかった。

「今日は、本当に楽しかったです。ここまで来るのに頑張ってきて良かった。諦めなくて良かったと心から思います。名残惜しいけど、私たちのライブは次の曲で最後になります。でも! 私たちTwinkle Sistersはこれからも頑張ります! 頑張って頑張って、絶対に皆を笑顔にします! だから、次で曲は最後だけど! 私たちの新しい始まりの一曲でもあります! 私たちの始まりを、聞いて下さい!」

もう終わり。でもみんながいる。
楓ちゃんも若葉ちゃんもいる。歓声を上げてくれる人達もいる。
そしてここまで見届けてくれたあなたがいる。
だからこのソロライブを頑張れた。
そしてこれからも頑張れる!

「と、如何にも終わりのように盛り上がってはみたけれど」

楓ちゃんに続き若葉ちゃんも口を開く。

「アタシたちの物語はまだまだ…ううん。ずっと続きます!」

私も、私も言わなきゃ。

「これからも今まで以上に、もっともっと頑張るからね♪」

声に出したら何かが自分の中で強く光った気がした。
改めて、ファンになってくれたみんなに感謝の気持ちを込めて頑張らないと!

3人「せーの」で揃えて…。

「Twinkle Sistersの応援、よろしくお願いします!」


スタッフ
  小説:月雲瑠依
イラスト:ルルカ


公開日
2023年12月17日



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