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きらめけ!アイドル!!
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突撃!いとこ両親の銭湯!!

春の温かな日差しが心地良い昼下がり、Twinkle Sistersは東京のとある下町を訪れていた。
事の発端はメンバー三人で書いている交換日記のある文章。桜がいとこの両親が運営している銭湯について触れたことから。
なんでもその銭湯の湯はあらゆる疲れ、怪我に効くという有名温泉もびっくりする効果があるという。
そこで桜、楓、若葉のTwinkle Sisters三人は休日を利用して銭湯に行くことになったのであった。

「え~っと、たしかこの辺りだったかなぁ?」
地図を両手で広げ、桜は首を傾げた。う~んと唸り始めたところから、やや後ろを歩いていた楓と若葉が口を開く。
「もしかして桜ちゃん、迷子になっちゃったの?」
「まさか、そんなわけないよね? 桜のいとこの家なんだから場所わかるよね…?」
「……うう~~ん……!!」
更に唸り声を大きくし、頬をぽりぽりと掻きながら二人に向き合うと口を大きく開けて笑った。
そんな桜の顔を見て、楓と若葉は「やっぱり…」と溜息を漏らした。
「…迷っちゃった♪」
「…はあぁぁ~~~……」
「さ、桜ちゃんが方向音痴なことを忘れていた私たちもいけないんだけれど…」
「うぅ~ごめんねぇ…いとこちゃんの家だし、地図もあるし余裕で行ける!!!って思ってたんだけどー……」
桜はガクッと肩を落とし、俯いてしまった。楓と若葉はやれやれと顔を合わせ、微笑みながら桜の方に手を置いた。
「まぁ、ね? 東京の下町ってなかなか来ることのない場所だし仕方ないよ。 三人で力を合わせて銭湯まで行こう?」
「そうよ。 せっかくTwinkle Sistersの三人でここまで来たんだから、ね?」
「ううう~~ありがとう…あぁっ、なんだか二人が天使に見えるよ…!!」
顔をガバッと勢いよく上げ、桜は満面の笑顔を二人に向けた。小動物のような言動に、思わず楓も若葉も小さく吹き出してしまう。
「桜ってホント、なんて言うのかなぁ~…桜だよね」
「へ? 私は私なんだから、私で当たり前じゃないの若葉ちゃん!!」
「あはは、そうだねそうだね~」
「それでこそ桜ちゃんだわ」
「ん~~?? 二人してなに言ってるのかサッパリだよぉ~~!!」
眉を八の字にしながら楓と若葉を交互に見る桜の動きは、やっぱり小動物のようだった。
「とにかく! 明日からまたレッスンが始まるんだから、ここで道草食ってる余裕はないよ。 桜、ちょっと地図見せてくれる?」
「いいよ~、はいどうぞ!」
若葉が桜から地図を受け取り、まじまじと睨めっこをする。しばらくすると「あ!!」と一際大きな声をあげ、目を見開いて地図の一部を指差した。
「どうしたの、若葉ちゃん。 そんな大声あげて…」
楓が心配そうに声をかけると、若葉はやや目に涙をためて大声で続ける。
「桜っ楓っ!! 私たち、目的地の銭湯の真逆に進んで来ちゃってるよ!!! ほら、ここが今私たちが居るモモンガ公園…で、ここが銭湯ね」
「えーと……ねぇ、若葉ちゃん。 これって駅を出たところから間違ってるんじゃないかしら?」
「…楓はわかったんだね。 桜はわかる??」
「……う、うぅ~~~ん……」
腕を組み考えるポーズをとるも、数秒後には頭から煙を出して顔を真っ赤にする桜を見て若葉は苦笑した。
「ま、まぁわかってたらこんなところまで間違えて来ちゃわないよね…」
「ま、誠に申し訳御座いません…あの、必要でしたら土下座しますゆえ…!!」
そう言って本当に土下座をしようとする桜を楓と二人で止め、頭をぽんぽんと撫でながら若葉は笑う。
「ほらほら、桜がドジっ娘なのは今に始まったことじゃないんだから今更気にしてないよ。 だから元気出して、ね?」
「そうだよ、桜ちゃん。 まぁ、今回はいつもより壮大にドジしちゃっただけだから」
「…でも、こうやって二人に迷惑かけちゃってるしぃー…せっかくの休みなのに、ごめんねぇ」
「大丈夫だって。 ほら、早く銭湯に行こう」
「いとこさんが運営してる素敵なところなんでしょう? 私、早くはいってみたいなぁ」
「う~ん…私も早くスライディングジャンプして湯船にダイブしたいよぉーーー」
「はいはい」

めそめそとする桜を励ましつつ、若葉が地図を片手に駅方面へと歩いて行く。途中でアイスを買って休憩したりと、三人は東京の広さを改めて思い知った。
「はむはむ、美味しいアイス屋・タカバヤシさんのアイスはいつ食べても美味しいよぉー…! 特にこのミラクルハッピー☆期間限定の幸せベリーアイスは格別ぅ~♪」
アイス屋のベンチに座りながらせわしくアイスを頬張る姿を見て、桜のモチベーションが戻ったことを伺えた。楓と若葉の保護者コンビは安心して胸を撫で下ろした。
桜は期間限定のミラクルハッピー☆期間限定の幸せベリーアイスを、楓はこれでスッキリ♪暑い日にオススメのスペシャルミントアイスを、若葉はごくごく普通に抹茶味のアイスを注文した。
「それにしても、桜ちゃんが食べてるその…えぇと、なんて言ったかしら?」
「ん? ミラクルハッピー☆期間限定の幸せベリーアイスのこと?」
「そ、それそれ。 なんだか凄い色をしているけれど…どんな味がするの?」
「ベリーって名前に付いてるんだからベリーなんじゃないの? ほら、色もそれっぽいし」
楓がふと、桜の食べるアイスに興味を持ちじっと見つめる。 せわしくアイスを頬張る姿を見て、美味しそうだと感じたらしい。
自分が手にするアイスをまじまじと見つめる楓を見て、桜は一度口からアイスを離してにこりと笑った。
「そんなに気になるんだったら食べてみる?」
「あら、いいの!?」
楓は頬を桃色に染めて両手の平を合わせた。いつの間にか、目がキラキラと輝いている。よほど気になっていたのだろう。
「その代わり、楓ちゃんのアイスもちょうだいね♪」
「わかったわ! うふふ、ありがとう桜ちゃん♪」
すっかり上機嫌の桜からアイスを一口頂戴し、猫なで声のような喜び声をあげた。
「んん~なんだろう、この味…ベリーはベリーでも普通のベリーじゃなくて…高級店のベリーみたい!」
「でしょー!!? わぁ、楓ちゃんにはこれがわかる~!? 他の人に聞いても全然わかってもらえなくて~」
「わかるわ、桜ちゃん!! そうだ、今度このお店のアイスをたんまり買い占めて女子会でも開きましょうか!!」
「わぁ女子会!!? なにそれすっごく楽しそ~う♪ 賛成賛成大さんせ~い!!」
意気投合して抱き合いはしゃぐ二人を横目に若葉は抹茶味のアイスを一口、頬張った。渋みが口内にじんわりと広がっていく。
「ほらほら、若葉ちゃんもこのアイス食べてみてよ~~!! 絶対美味しいからっ!!」
若葉の腕に自身の腕を絡め、桜はえいっと若葉の口に自分の持つミラクルハッピー☆期間限定の幸せベリーアイスを頬張らせた。
あまりに急なことだったため、若葉は瞬きを数回した後ピタリと動きを止めた。先ほどまで渋みが広がっていた口に、ベリーの甘酸っぱい味が広がる。
「…なんだろう、この味…」
「どう? ねぇねぇ若葉ちゃん、この味どうーっ!?」
「きっと若葉ちゃんも気に入ると思うわ…!」
手を握り締め若葉を見守る桜と楓。二人に見守られる中、若葉は口にいれたアイスを全て飲み込んだ。
「なんて言うのかな…甘渋?」
それが若葉のアイスを食べての感想だった。
「あ…あましぶ??」
「ご、ごめん…抹茶味のアイス食べてたから味混ざっちゃったんだ」
「それは残念だわ…」
ミラクルハッピー☆期間限定の幸せベリーアイスと抹茶味のアイスを同時に食べるのは止めよう…Twinkle Sistersの三人はそれぞれ心の中で誓った。

銭湯とは真逆の方角に進んで来てしまったと気付いてから早1時間半。三人はやっと桜のいとこの両親が運営する銭湯へと辿りつくことができた。
途中で休憩を挟みつつ、駅からここまではタクシーで三十分ほどの距離だった。約一時間、東京の人混みの中を歩いたことになる。
タクシー内で楓がぽつりと呟いた一言…「迷ってタクシーを使うなら、初めから使えばよかったかしら?」が今日の格言になった。
「おうおう、桜ちゃん!! こんな遠くまでよく来てくれたねぇ~」
「まぁ!! 桜ちゃんじゃないの~~!! 久しぶりねぇ~~!!」
ラフな格好をした夫婦が銭湯の扉を開けてすぐに出迎えてくれた。この夫婦が桜のいとこの両親ということだ。
桜は先ほどまでぐったりしていたのが嘘かのように、小さくジャンプしていとこの両親へまとめて抱きついた。
「久しぶり~!! ねぇ、元気にしてたっ!?? 忙しくてなかなか来れなくてごめんねぇ~!!」
「いいっていいって! 桜ちゃんはアイドルになるために頑張ってるんだから、応援してるからねぇ♪」
「ただのアイドルじゃないよ!! アイドルの中の一番、トップアイドルになるんだよ!!」
鼻息荒くしてアイドルについて語る桜を見て、実の子供のように桜の頭を優しく撫でるいとこの両親。そんな様子を優しく楓と若葉が見守っていた。
「あ、後ろの二人は桜ちゃんのお仲間さんかい? いやいや、こんなボロっちい銭湯によく来てくれたなぁ~」
楓と若葉を見ると、小走りで駆け寄り二人の手を両手で握り締めた。温かくゴツゴツとした、いかにも働く男といった手だった。
「初めまして、私は望月 楓と申します。 桜ちゃんとTwinkle Sistersでご一緒していますわ」
「私は夢咲 若葉! 二人と同じTwinkle Sistersだよ」
「おうおう、二人もとってもかわいいコじゃないか~! オバサンの若い頃にそっくり、なぁ~んてね!!」
腹を抱えてケラケラと笑う妻の姿を見て、楓と若葉はどこかこの人物が桜に似ているな…と静かに思った。さすが、いとこ。
「ほらほら母さん、桜ちゃんたちは銭湯目当てで来てくれたんだから早く開放してやんなさい」
「まぁ! お父さんったら酷いわぁ~!! 私のことを邪魔者扱いしてっ!!!」
「誰も邪魔だとは言ってないだろう~。 それにオレたちには仕事が残ってるんだから、そっちをやらないと~」
「はいはいわかりましたぁ~…じゃあ桜ちゃん、ゆっくりしていってちょうだい! お風呂上りには美味しい牛乳用意しておくからねぇ♪」
「あ、牛乳!! やっぱりお風呂上りには牛乳を飲むんですよね銭湯では!!」
牛乳と聞き、今まで桜たちを見守っていた若葉が急に声を荒げて前へと進み出た。鼻息を荒くして興奮しているのが見てすぐにわかる。
「私ですね!!実は毎朝牛乳飲んでるんですよ!!私牛乳大好きでですね…!! だから銭湯に来たら絶対、お風呂上りに一本飲もうって決めてたんです!!」
「そうかいそうかい!! 今の若いモンは牛乳嫌いってコが多い中、あんたは健康的でいいねぇ~!!」
「いやいや、牛乳を飲まないなんて勿体無いですよ!! 皆もっと飲むべきだと思います!!」
牛乳について熱く語る若葉を見て意外だったのか、楓は目を丸くした。
「私も牛乳は好きですが…そうですね、紅茶の方が好きかしら。 牛乳は年に数回飲むか飲まないかくらい…」
「私は~…オレンジジュースとかリンゴジュースかなぁ? 牛乳は中学生のときまではよく飲んでたんだけど~…給食がなくなってからは飲んでないや」
「ええ~!!? 二人とも、勿体無いよ!!せっかくだし今日、お風呂上りに皆で飲もうよ!!」
両手を堅く握り締めふんすと気合十分な若葉を見て、桜と楓は一瞬戸惑ったが「まぁ…」と妥協した。
「別に嫌いってワケでもないし~…うん、じゃあお風呂上りに皆で飲もう!」
「えぇ。 お風呂上りの牛乳は腰に手をあてて一気に飲むものなのでしょう? 前にテレビで見たことあるわ」
「そうそう!! あぁ~そうと決まれば早くお風呂に入ろう!! 気持ち良いお風呂に美味しい牛乳!!最高だよ!!」
ハイテンションを維持したまま若葉は更衣室へと駆け込んだ。先日完成したばかりの若葉のソロ曲を口ずさんでいる。
しばらく固まったままの桜と楓は、はっと我に返りお互いの顔を見て軽く笑い合った。
「なんだか若葉ちゃん、妙にハイテンションだね?」
「牛乳と聞いてからの若葉ちゃんはまるで別人のようになったわね…正直びっくりだわ。 若葉ちゃんと牛乳の間にこんな強い関係があったなんて」
「私も知らなかったよ~、なんだか怖いくらいだねぇ」
「ふふふ…まぁ、今日はせっかくここまで来たのだから楽しんで行きましょう? それでまた明日からのレッスンを頑張らなくちゃ」
楓は凛とした声で桜に言った。桜は一瞬、急に真面目になった楓に驚くもすぐに満面の笑みで返した。
「うん!! 三人で一緒に、ね♪」

いとこの両親の好意で、三十分だけTwinkle Sistrsが銭湯を貸しきっていいことになった。
自分たち以外の人がいない銭湯は静かで、浴槽の中の湯が揺れる音ばかりが耳にはいってきた。
「うわぁ、湯気が凄いねぇ~!」
「正に東京の下町銭湯って感じだね…!! こういうの、憧れてたんだ!」
「あ、桜ちゃん桜ちゃん!」
出入り口から一歩、浴場へと足を踏み入れようとしている桜を楓が急いで引き止めた。なぜ引き止められたのかわからない桜は振り向き「なに?」と一言。
「桜ちゃん、前にお風呂場で転んだって言ってたでしょう? だから、転ばないように特に気を付けた方がいいんじゃないかしら」
「あ、そういえば…忘れてた」
桜は以前、自宅の風呂場で滑って転んでしまったことがある。楓はそのこともあり、桜に注意を促したのだった。
若葉も桜同様、そのことをやや忘れていたらしく「そういえば」と小声で呟いていた。
「あはは、自分のことなのに忘れちゃってたよー! 楓ちゃん、注意してくれてありがと♪」
「うふふ、どういたしまして。 ほら、ゆっくり慎重に歩くのよ?」
「うん!」
言われた通り、ゆっくり慎重に湯船へと向かう桜の後姿はやはりどこか心許なかった。慎重になり過ぎてプルプルと震えてしまっている。
そんな姿を見かねた若葉はタオル片手に桜の元へと早歩きで向かう。桜が若葉のように早歩きをしていたら、もしかしたら転んでいたかもしれない…
「ちょっと待って、桜。 やっぱり桜だけじゃ危ないし、私につかまっていけば安心じゃないかな?」
「若葉ちゃんにつかまる?」
「そう。 ほら、慎重になり過ぎてプルプル震えちゃってるじゃん。 はい、つかまって」
「あああありがとうっ」
若葉の腕につかまり、桜は大きく息を吐いた。若葉もなんだか安堵する。
「さてっと、まずはどの湯船につかろうか? この「美人さんになる湯」??それともこっちの「若返る湯」??」
ありがちな名前がついた湯が数多くあり、女湯には八つの種類の湯があるらしい。男湯の方には五つ種類があり、時間帯によってはそちらに入ることもできる。
さすがに今回は女湯と男湯が入れ替わる時間帯までここに居れないため、今の女湯を満喫するしかなかった。正直、男湯の方の湯も気になるところだが…
後から来た楓も辺りを見回しどの湯船に一番につかるか決める。記念すべき三人での銭湯…その一番風呂を飾るのは、果たしてどの湯船だろうか?
「あら、このお湯なんてどうかしら?」
「どれどれ?」
楓が目に留めた湯船の札を見てみると、そこには「輝ける湯」と書かれていた。輝ける湯、と立派に書かれているが特に湯が光っているわけではない。
「輝ける湯、かぁ…なに、この湯船につかればキラキラ輝けるのかな?」
「そんな風には見えないのだけれどね」
じっくりと湯船を観察するも、少し色がついた湯なだけで一般的な温泉の湯と変わりがないように思えた。
「でもさ、二人とも! この湯船が一番私たちらしくて良いと思わない?」
「え?」
「私たち、らしくて?」
「そう!!」
桜が両手に握り締めたタオルを広げ、振り回しながら力説する。まるで子供が必死に親を説得するようだ。
「私たちのユニット名はTwinkle Sisters」でしょ? キラキラ輝けるようにって…だから、私たちの初銭湯はこの湯船がピッタリじゃない!」
桜、楓、若葉の三人で結成されている「Twinkle Sisters」…いつも一緒にキラキラ輝こうという思いを込めて付けられたユニット名。だからこそ、「輝ける湯」が丁度いいと桜は主張した。
「…って、たかが一番風呂だしそこまで考えなくてもいいかなー…?」
やや自信をなくし肩をすくめる桜を真剣に見つめる楓と若葉の二人。真剣過ぎるくらいの眼差しに、思わず桜は目をきゅっと閉じた。
しばらくあまり心地良くない沈黙が続き、桜が自身の発言に後悔しそうになったところで沈黙が破かれた。
「いいんじゃないかな!」
「うん、素敵だと思うわ!」
「へっ??」
桜が目を開くと、二人が嬉しそうに笑う姿が映った。若葉にいたっては目に涙を溜めているくらいには大爆笑している。
首をひょこっと傾げて、桜は再度二人を真っ直ぐに見た。笑っている理由がわからず、むず痒い。
「な、なんかヘンなこと言った?? なっ、なんで二人ともそんなに笑ってるの~!??」
「いやいや、やっぱり桜は桜だなって…うん、たかが一番風呂、されど一番風呂だよ!」
「そうね、そんな桜ちゃんが大好きなのよ私たちは」
「え~~?? ちょ、ちょっとぉ~そう言われると照れるじゃん!!」
真っ赤にした顔をタオルで覆い、照れ隠しをする桜。そんな桜の様子を楓と若葉は笑いながら見つめた。

いつでも一緒。Twinkle Sistersはどんなことがあっても、苦しいことや悲しいことがあっても手をとり合って進んでいこう。それが三人のスタイル。
普段はあまり考えることがないけど、ひょんなことでそれが一番大切なことだと改めて実感することになった。
「…よし! じゃあ、この「輝ける湯」が私たちTwinkle Sistersの銭湯デビューだ!! 皆で一緒に入ろう!!」
「そうね。 あ、どうせなら手をつないでみない?」
「え、えへへ…!! 賛成っ!!」
三人はお互いに手をつなぎ合い、強く握り締めた。慎重に湯船の枠に上り(※良い子は真似しちゃ駄目だよ!!)、湯船に並々と張られた湯を見つめた。
「じゃあ、せーのでいくよ!! せぇ~の~…!!」
桜の合図と同時に三人は湯船へと飛び込んだ。湯船の中の湯が高く上がり、周りにバシャバシャと飛び散る…こんなこと、他に人がいたらできなかっただろう。
湯船につかった三人はクスクスと笑い合い、お互いの顔を見ては更に笑い声を大きくした。
「桜が髪の毛結んでないと、ヘンな感じだね」
「そういう若葉ちゃんだって、髪の毛がペタンコになって別人みたいよ?」
「楓ちゃんは髪の毛まとめてるんだね! なんだか、いつもより大人っぽーい♪」
こんな何気ない場面でも、三人はお互いに知らなかったことを知ることができて嬉しいと感じていた。どんなに些細なことでも大好きな人のことをもっと知りたいと思う。
笑い合った後はしばらく黙り、「輝ける湯」を楽しんだ。ツルっとした湯で、普通の湯とは少し違った肌触りだった。
たしかに、この湯船に長時間つかっていれば湯船の名前の通りに見た目がキラキラ輝くかもしれない。そんなことを思わせるような湯船だった。
三人は上機嫌に自分たちの歌を合唱しながら、日々の疲れをこの「輝ける湯」で癒したのであった。

「…あ、そういえば…」
「どうしたの、楓」
眉をひそめ、口元を手で覆いながら楓が呟く。
「銭湯は湯船に入る前に「かけ湯」をすると聞いたのだけれど…私たち、かけ湯をしていないわ」
「………あ」
「し、しまったー…完全に忘れてたよ…!!」
痛恨のミスに、若葉は思わず頭のてっぺんまで湯船に潜ってしまった。
「わわわ若葉ちゃんっ!!? だだだ駄目だよ溺れちゃうよ…ってキャアアア!!!??」
若葉を引き上げようと立ち上がり駆け寄ろうとしたところ、自分が手に持っていたタオルに足が引っかかり派手に転倒してしまう桜。
むしろ助けようとしている若葉よりも危ない状態に陥る桜…楓は思わず溜息を吐いて一言。
「お約束ね……」
湯船に潜る若葉、転倒してジタバタともがいている桜のツーショットは正に異様な光景であった。こんな姿を見られたら、Twinkle Sistersのファンはどう思うのだろうか…少し知りたい気もした。

女湯の全湯船を制覇した後は、約束した通りに牛乳を皆で飲んだ。もちろん、腰に手をあてて一気飲み。
Twinkle Sistersの三人は、こうして銭湯で日々の疲れを癒すと同時にお互いのことをまた知ることができたのであった。

…めでたしめでたし!


スタッフ
  小説:花沢 里穂
イラスト:いおり里音


公開日
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